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「HK-2000SP」テクニカル・インフォメーション
ラインコントロール(プリアンプ)
(本機の生産は終了。後継機『HK-2010』をリリースしました)  →HK-2010

■このページの技術情報は試作機の実測データが記載されています。素子のバラツキ等で個々の製品の特性は若干異なります。
■サンプル機試作後の検討で,一部設計が変更されているモデルもございます。
■詳細はメールにてご案内いたします。お気軽にお問い合わせ下さい。

Page Index ■HK-2000SPの規格 ■HK-2000SP開発の歴史 ■プリント基板について
■HK-2000SPの音質 ■入力切替リレーについて   
■HK-2000SPの特性 ■HK-2000SPの回路図・実体図
2007年真空管オーディオフェアーにて、タムラ・T's Barブースのデモシステムに採用された「HK-2000SP」

左上の写真はデモの際貼られた「T's Bar」バッジが貼られていますが、バッジはシール名板に変更されます


■HK-2000SPの特性■     ■HK-2000SPの回路図・実体図■
モデル概要 ■12AU7プッシュプル出力回路・高出力電圧
■ライントランス出力トランス搭載・低出力インピーダンス
■10dBステップATT装備・音量調整ボリューム
■5ステップ・低域ブーストコントロール装備
■金張り接点リレーによるラインセレクター
■CAD設計による精密両面プリント基板採用
使用真空管 ECC82/12AU7 4本
コントローラー仕様 VOLUME:100kΩ(A) アルプス製27型2連
ATTENUATOR
 
-10/-20/-30/-40/-∞(dB) 5ステップ
LOW COMPENSATOR
 
FLAT/+2/+4/+6/+8(dB) at 70Hz 5ステップ
LINE SELECTOR:LINE 1〜LINE 5 5入力切替
入力端子 LINE 1〜LINE 5 5入力 RCAアンバランス 
入力インピーダンス100kΩ
出力端子 RCAアンバランス2系統(パラレル)
出力インピーダンス約200Ω
推奨負荷インピーダンス10kΩ以上
AC OUTLET SWITCHED x1 UNSWITCHED x2
周波数特性 10Hz〜100kHz ±0.5dB以内 出力0dBm 10kΩ負荷
ひずみ率特性 0.05%以下 周波数1kHz 出力0.5V 10kΩ負荷
ゲイン 20dB 周波数1kHz
最大出力電圧 25Vrms以上 周波数1kHz 10kΩ負荷
残留雑音 0.5mVrms以下
搭載トランス・型名 ライン出力トランス:NP-126・・ISOカタログ品
電源トランス:Rコアートランス 低漏洩磁束型
AC電源・消費電力 AC100V 50/60Hz 40W
寸法・重量 (W)430x(H)88x(D)230・・突起物含まないキャビの寸法
ゴム足含む高さ:約110mm 重量:約5kg
付属資料 回路図・実体配線図・部品表



「HK-2000SP」について
PP出力・ライントランス搭載ラインコントロール・アンプ「HK-2000SP」開発の歴史
試作1号機・「プロトタイプ」
■1996年初頭に企画スタート
■1996年8月試作機完成。ラジオ技術10月号に発表
■初段12AU7はP-K分割による位相反転のみ。ゲイン=1。出力段6CG7PP。ライントランス出力。無帰還アンプ。整流管整流
■入力はリレー切り替え。10dB ATT装備
■シャーシは銅板にチーク無垢材

☆プロトタイプに改良を重ねHK-2000の開発につながる
↓↓
2号機・「HK-6」・管球王国Vol.30で頒布
■プロトタイプを改良、誌上頒布を考慮してより作業性向上タイプに設計変更
■2003年管球王国Vol.30に発表
■初段は抵抗負荷電圧増幅→PK分割→6CG7PP・ライントランス出力。NFB約7dB。整流管整流。
■低域ブースト回路装備
■回路部はプリント基板採用

↓↓
3号機「HK-2000SP」
■1号機、2号機の開発を経て、2006年本機を開発
■整流管は廃止。ダイオード整流による倍電圧整流回路を採用。チョークは廃止
■CAD設計による電源一体型両面プリント基板を開発
■増幅部回路構成は「HK-6」を採用。出力段は6CG7から12AU7に変更
■10dBステップATT、低域ブースト回路装備
1号機、2号機に比較し、解像度が優れる

約10年の歳月を経て開発された現在の完成形
■ 
「HK-2000SP」は上記の変遷を経て、三世代目に開発されたラインコントロールアンプです。1号機が1996年ですので、以来約10年の歳月がかかったわけです。それぞれ形・作り方は変わっていますが、終始一貫変わらないのは「プッシュプル出力段とライントランス出力」です。

お気に入り・プリアンプの設計製作には大きな労力を要します。しかし、何か印象に残るトリガー、ここではPP出力段とライントランスがキーワードになりますが、ポイントになるキーワードを見出したら、時間はかかりますがそれらを徹底的に追い込んで行くことで、また新たな何かを見出せるわけです。

HK-2000SPはこうした背景の中から開発されたプリアンプです。本機が最終の姿とは申し上げれませんが、長い歴史の中から少しずつ改良された完成度の高いプリアンプであるのと同時に、一度システムに入れてしまうと、もはや本機をはずすことができない大きな存在となるでしょう。


『本機のラインアウトについて』
HK-2000のラインアウト端子は、パラレル接続されたRCA端子を2系統装備しています。通常はどちらかの出力端子をパワーアンプに接続しますが、パワーアンプを2台使用するバイアンプ接続、あるいは2系統の異なるスピーカーシステムを2台のパワーアンプでドライブする時などに、本機に装備された2系統のライン出力で対応できます。

HK-2000のライン出力はライントランス出力方式を採用していますので、出力インピーダンスは約200Ωに設定されており、推奨負荷インピーダンスは10kΩ以上に対応します。この結果一般的な入力インピーダンス(通常は50kΩ〜100kΩ)を持つ複数台のパワーアンプを並列に接続しても、特性の変化なしに余裕を持ってパワーアンプに音声信号が供給されます。

また、マルチアンプシステムではラインアンプからの出力ケーブルが長くなってしまうこともあり、ラインアンプの出力条件がより厳しいものになります。HK-2000の低インピーダンス出力は、こうした長い出力ケーブル使用時でも音質を損なうことなくお使いいただけます。

HK-2000の出力端子は、これらの様々な実使用の環境下でも特性の劣化がないよう十分考慮された出力端子が装備されています。

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■プリント基板について■

ときおり目にするのですが、プリント基板採用の真空管アンプに否定的なご意見が見受けられます。いわく「プリント基板の音がする」。だから「私のアンプにはプリント基板は使用しない」・・・・。いったいプリント基板の音ってどんな音なのでしょうか?。ご自身はプリント基板の設計にどれだけの経験をお持ちなのでしょうか?。そして実際にプリント基板を採用した真空管アンプを設計されたことがあるのでしょうか?。私にはこうした偏見とも思える客観性のない、いわばご自身の主観だけで論じる意見には賛同できません。

確かに真空管アンプを“レトロ”でとらえれば、それもわかります。かつてのマランツ、マッキントッシュの真空管アンプがそうだったから・・・・。しかし、真空管アンプはレトロだけで製品開発ができるのでしょうか。

私はそうは考えていません。半導体であってもプリント基板であっても、そして真空管であっても、これらは単に「一つのディバイスである」と、とらえています。『求める音・製品品質・性能などに最もふさわしいディバイス』は何なのか、これがエンジニアの志向です。私は決して半導体を否定したりプリント基板を否定したりすることはありません。幅広い選択肢を持って、それらの中から慎重に選ばれた、その製品に最もふさわしいディバイスを採用する。その結果が高音質アンプ、高信頼性製品の開発につながるものと信じています。


PRE AMP「HK-2000SP」の基板 EQ AMP「HK-14」の基板
   

プリント基板の設計例:写真はEQアンプ「HK-14」の基板を示す

■基板の仕様:ガラエポ1.6t・両面スルーホール・ハンダリベラー(ハンダメッキ)・レジスト・シルク印刷・銅箔35μ。
■部品配置は電源部、R ch増幅部、L ch増幅の3分割
■増幅部パターンの信号経路は迷走のない一方向部品配置
■増幅部パターンはL・R同一パターン設計
■部品面とパターン面にはアースレイヤーを設ける

近年パソコンの普及とパフォーマンスの向上で、CADソフトによる基板設計が手軽に設計できるようになった。かつてのテーピングによる版下設計を今や懐かしく思う時代である。CADで描いたパターンは、ネット経由でデーターを送る。1週間も待てば綺麗に仕上がったプリント基板が送られてくるのである。

しかし基板設計にはCAD設計であれなんであれ、多くのノウハウ・経験がなければ簡単に設計できるものではない。

CAD設計ではコピー&ペースト機能がありがたい。全く同じパターンがL・Rで簡単に描けてしまうのである。両面基板では最短でのパターン引き回しが可能、部品面とパターン面の余白部にはアースレイヤーを広く描ける、など設計面性能面でのメリットは多い。

しかし、最も大きなメリットは製作時の「再現性」にある。つまり誰が作っても製作者の技量による性能のバラツキがないのである。特に微小信号を扱うプリアンプ、イコライザーアンプではプリント基板採用のメリットは計り知れない。


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「音質について・管球王国Vol.30より抜粋」

以下にHK-6の管球王国Vol.30の記事から抜粋して本機をご紹介します。HK-2000SPは、HK-6に比べさらに分解能に優れた音質に改良されています。

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パワーアンプは本誌28号でご紹介しました2A3パラレルシングルアンプ「HK-5」をつないで試聴しました。HK-5のボリューム位置は12時位置、本機のアッテネーター(ATT)は-20dBポジションに設定、低域補正はフラット位置にてメインボリュームで音量を適度に可変しながらの試聴です。

ソースはCDを聴いてみます。HK-5ダイレクト再生に比べてまず感じる印象は、明らかに音抜けが良くなります。円やかさと清々しさも加わり、やや角がとれた印象はシステム全体が一回りアップグレードされたようにも感じられる再生音です。

次にこの原稿を書きながら低域補正を+4dBポジションに設定して、邪魔にならない程度の音量でNHK・FMを聴いておりますが、ほど良く補正された低域は誇張されることもなく、バックグランドでの長時間再生でも疲れを感じさせないこの音は大変好ましい音質に仕上がっています。

本機(HK-6)では製作の容易さと誰が作っても高い完成度と安定な特性が得られるように、プリント基板を採用しています。プリント基板につきましては「量産機=廉価」とか「プリント基板の音がする」とかの声が聞こえてきそうです。大量生産での生産性が高まることは確かですが、こうしたご意見がプリント基板に対する偏見でなければよいと思う次第です。

本機の元になっている現用機のリレー部はプリント基板、他は“古典的な”ラグ端子配線ですが、それに比べてなんら遜色はありません。プリント基板を使って整然と作られた結果とは申し上げられませんが、むしろ透明度の高さ、音抜けの良さなどに本機の方に優位性を感じます。

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■「HK-2000SP」に採用したラインセレクター・リレーについて■
「HK-2000SP」のラインセレクターには微小信号用・高信頼性リレーで、5系統のライン入力がセレクトされる。

搭載リレーは■接点:2トランスファー ■金張り接点 ■防塵・防滴仕様 を採用

リレー駆動回路はクイック・チャージ、スロー・ディスチャージのロジック回路で制御。確実なショーティングタイミングが得られる。同時にクリックノイズの発生は皆無、快適な操作感でライン入力をセレクトする

高音質・高性能プリアンプの設計には様々な困難を伴う。加えて製品を組み立てる上での作業性、品質の安定性などを考慮すると、さらに難しさも増すのである。中でもセレクター部の“シールド線の束”を想像すると、良い音のする製品、安定した性能が得られる製品設計だとは私には思えない。

「HK-2000SP」の入力セレクター部にはリレーを採用した。私のプリアンプには約17年前に設計された、ラインアンプ機能を盛り込んだFETチャンネル・ディバイダーに採用して以来、リレーを採用している。リレー駆動のロジック回路もこの時に開発、以来基本回路の変更はない。

しかし採用するリレーの選択には慎重を要する。本機で採用されているリレーは音質と信頼性に実績ある、金張り接点・防塵・防滴・密閉型の微小信号用リレーを使用している。17年前のチャンデバ、10年前に設計された「HK-2000SP」の母体プリ、プロトタイプ・1号機にも同じリレーが使われているが、試作以来トラブルは皆無、現在現役で活躍するモデルである。

入力ジャック近傍に配置されたセレクターリレーは、入力ジャックからの配線は品質の良い単線が使用でき、シールド線である必要はない。このメリットは計り知れない。

リレーの駆動信号はDC12V、ロータリースイッチで駆動回路に印加される。従ってロータリースイッチ接点の信頼性には多くを求める必然性はない。接点圧も軽微で良い。つまりは電気的、機械的スペックはほどほど、もっぱら操作フィーリングに重点をおいて選べるのである。一度リレー採用を味わってしまうと、もはや“シールド線の束”は私には考えれない。

機会があれば「HK-2000SP」をシステム内で末永くお使いいただきたいと思っている。

『お知らせ』
ISO社業務閉鎖に伴い、本機の生産は終了いたしました。本機の後継機は、出力トランスにノグチ・ファインメットトランスを搭載した『HK-2010』がリリースされました。引き続きご愛顧のほどよろしくお願いいたします。  →HK-2010


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