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update 2019.09.08
『dbx DriveRack4800』 デジタル・チャンデバ・音質改善奮闘記
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我が家のリスニングルームにデジタル・チャンデバdbx DriveRack4800(dbx4800)が設置されたのは、2018年5月のことである。マルチシステムとは長年取り組んではいるが、要になるチャンデバは、「実験的」とか「一時的」とかの使用を除き、自作も含めてオーディオ用(民生機器)のアナログ・チャンデバを使用してきた。
 
システムの中に1台でも「業務用機器」が入ってくると、バランス、アンバラ混在で途端に機器間の接続環境が変則的になり、業務用機器の真価を発揮できない事態が生じてしまうのである。そもそもバランス伝送がアンバラ伝送より音が良い!などと思ったこともなく、むしろ変則接続による精神的なモヤモヤの弊害が大きく、極力業務用機器の導入は避けてきたのである。

 
様々な変遷をたどるのが宿命のようなマルチシステムの中で、近年取り組んでいるのが、『JBL・エベレスト・DD66000方式をマルチシステムで聴いてみる』(このページ)である。
 
エベレスト方式は、ウーハーをオーバーラップさせることで実現できるのであるが、ハイパス・ローパスのカットオフが連動するアナログチャンデバでは写真のとおり2台必要になる。
 
しかもカットオフ周波数の選択、フィルターの傾斜等、基本的な設定の自由度にも限度がある。そんな折、このページでご紹介している鳥取県在住の山根氏からシステム変更でdbx4800が不要になったとの事、我が家に送られてきたのである。
 
デジタル・チャンデバのDSPによる設定の自由度は、アナログチャンとは比べようもないほど高い。このDSPに期待して、この際アナログチャンデバを一旦引退させ、dbx4800に置き換えることにした。以来約1年半、我が家における本機の使いこなしのご紹介もかねて、この間の変遷をご紹介させていただく。

 
☆冷却ファン騒音対策☆
dbx4800の発売は2006年である。本機の電源部はスイッチング電源が採用されている。当時のスイッチング電源は今に比べれば遥かに低効率、結果発熱も大きい。
 
本機は25mm角位の小さなファンで排気をしているが、このファンからの騒音は相当なものである。PAの現場では気になるものではないと思うが、家庭内ではとても許容できるレベルではない。先ずはこれを何とかしないと次には進めない。
 
対策-1:オリジナルの25mm角ファンを背面パネルから浮かす。同時に供給電圧を起動ギリギリまで下げる。
 
対策-2:DC12V 60mm角低騒音ファン追加。供給電圧はDC約7V。吹付で冷却。
 
上記2点の対策で、完全に消音とは行かないが、許容範囲にまで低減させた。追加のファンは、基板の取り付けねじにスタッド(支柱)を立てて取り付け、必要であればオリジナルにいつでも戻せるよう配慮をした。

 
☆プリアンプをバランス出力に改造☆

1996年・ラジオ技術5月号発表機
 
上記ファン騒音も解消され、ここからは本格的にdbx4800の使いこなし作戦の変遷である。先ずは、プリアンプの出力をRCAからバランスXRLに変更する。
 
現在使用中のプリアンプは1996年製、銅板シャーシで製作した6CG7PP・トランス出力プリである。このプリはトランス出力と言うこともあり、元々バランス出力とアンバランス出力をスイッチで切り替えて使用できるよう設計されている。しかしながら当リスニングルームでは、出力がバランスである必要はなく、長年RCAアンバランス専用で使用されていた。
 
今回改めてバランス出力を復活させ、この際長年使用されていなかったXRLコネクターも新規に交換しリフレッシュ、出力トランス2次側センタータップをGNDにしたバランス出力専用プリに改造した。出力インピーダンスは実測約300Ωである。

 
☆オーバーラップ・ウーハーはバランス入力、BTLアンプでドライブ☆
JBLエベレスト方式のスピーカー構成は、基本的には1本のウーハーと中高域ドライバーの2ウェイであるが、他の1本のウーハーを使用して、2ウェイのウーハーにオーバーラップさせる事で、不足する低域を補う構成である。 
 
この場合チャンデバの設定は、2本のウーハーでそれぞれで最適な設定を行なう。現在オーバーラップ・ウーハーの周波数帯域はfo~125Hz、ベッセル-18dB/octのローパスに設定し2ウェイ・ウーハーとオーバーラップさせている。各チャンネルのF特設定は下記の通りだが、さすがデジタルチャンデバ、dbx4800の設定の自由度は高い。
 
パワーアンプは半導体ステレオアンプ(SONY TA-N330es)を2台、左右それぞれ1台ずつモノーラルで使用し、スピーカーはBTL接続で負荷8Ω出力300W(定格出力)でオーバーラップ・ウーハーをドライブする。
 
パワーアンプの入力は、dbx4800のアナログ出力(バランス)で取り出し、HOT側、COLD側それぞれをパワーアンプ近くで分岐し、ステレオアンプのR ch L chに入力するバランンス伝送である。
 
パワーアンプの入力セレクター、ボリューム等は機内配線の変更でバイパスし、入力直後で固定抵抗で入力信号を分圧し、ゲインを27dBに固定、入力インピーダンスは約30kΩの設定で使用する。

 
☆dbx4800のフィルターの設定(暫定)☆

dbx4800コントロールPCのスクリーンショット
dbx4800の入出力はこの時点では下記の通りの設定である。2ウェイ・ウーハーと中高域ドライバー用パワーアンプとdbx4800との接続は、バランス→アンバラ変換の変則接続ケーブルで接続されたままである。
 
☆オーバーラップ・ウーハー:fo~125Hz・ローパス
  BS18dB/oct
☆ウーハー:fc1=35Hz fc2=500H・バンドパス
  BS24dB/oct
☆中高域ドライバー:fc=594.6Hz・ハイパス
  BS24dB/oct

注)BS・・・ベッセルフィルター
 
この設定でしばらく聴いて、システム全体を見極めることにする。

 
☆中高域TAD TD4001を外部DAC ES9018D Dual DACで鳴らす☆
  
暫定ではあるがdbx4800の基本設定を終え、少し落ち着いて音質チェックもできるようになったのだが、中高域ドライバーTD4001の音にどうも今一つ納得が行かない音なのである。
 
TAD「TD4001」ベリリウム・ダイアフラムの音は、ツィターを必要としないソフトでまろやかさも併せ持ちながら、立ち上がりの良いシンバル、よく言われる円熟味のある渋い音、”いぶし銀”とも言われる音であるはずなのであるが、しかし、何か物足らない、中級機から出てくる”安っぽさ”みたいな音に感じるのは、dbx4800に抱く過大な期待、本機に対する先入観なのだろうか、あるいはdbx4800と言えども所詮は『プロ機』だから・・・・、と言うことだろうか。
 
と言ううわけで、dbx4800内蔵のパライコ(パラメトリックイコライザー)の高域を少し調整してみた。そもそも私の考えは、この手のエフェクターは先ずは使用することなく基本的な設定を行う、その上でもはやここまでと調整を追い込んだところで、何か不満があればエフェクターを入れてみる、と言うのが良い使い方と思う次第であるが、とりあえず試して見たのが下図の特性である。
 
5KHz近辺から上を少し補正してみる、しかし最大でも1.5dB程度の補正、”ほんの気持ちだけ”と言う程度である。
 
このくらいでもTD4001は良く反応してくれて、パライコON-OFFで高域のプレゼンスは大分変わってくる。
 
しかし、F特をいじればそれなりに反応はするが、音の品質、音質が変わるわけではない。
 
 
そこで、このページでご紹介した通り、リスニングルームのUSB DACをAK4497 Dual DACに置き換えたのを機会に、それまで使用していたES9018 Dual DACをTD4001再生ラインに投入することにした。
 
dbx4800に装備されているデジタル出力・AES/EBUをを、ベリンガーSRC2496でS/PDIFに変換、ES9018 DACに入力し、アナログ信号に変換後パワーアンプに送り込む。
 
これによりdbx4800内蔵のDACに代わってES9018 DACでアナログ変換をするのである。これで、dbx4800の音質向上を期待するのと同時に、dbx4800のアナログ変則接続が一か所解消される。残る変則接続は、2ウェイウーハーのアナログ出力のみになった。
 
内蔵DACをES9018 DACに置き換えた効果はかなり大きな変化である。少なくとも言えることは上記パライコはOFFで十分高域のエネルギ感は確保できるようになった。
 
外付けDACに変えた当初は、アナログチャンデバに引けを取らない音質に変わったと思ったのであるが、しかし、時間が経つにつれ、今一歩アナログチャンデバ時代のクォリティーは得られていないように思われる。もう一工夫必要か?、と言うレベルである。

 
☆2Wayウーハーも外部DAC・AK4495 Dual DACに変更☆
AK4495 Dual DAC AES/EBU対応・AK4495Dual DAC
 

AES/EBU対応DIAレシーバー
写真左はデジタル・オーディオ・レシーバー『CS8416』がマウントされたSPDIF to I2S、DAI基板である。
 
この基板はES9018 DACのデジタル入力を、AES/EBUに対応させるための実験基板であるが、実験も無事終了したところでAK4495 Dual DAC基板がお蔵入りしているのを思い出し、この際2Wayウーハー用の外部DACとして使用してみた。
 
AK4495 DACへの変更でdbx4800の内蔵DACはオーバーラップ用ウーハーのみで使用、他のチャンネルはdbx4800のデジタル出力から外部DACをつなぐことになる。
 
これでdbx4800のバランス・アンバラ変則接続は全て解消されることになる。2WayウーハーはJBL2225/38cm、外部DACによる音の変化はさほど大きく変わるものでもないが、良く聴くと、幾分締まった低域が出てくるのがわかる。しかしながら、バランス出力の①、③端子を接続する、いわば変則アンバラ接続の解消は、『アンプの出力をショートする』と言う、アンプ屋としては一瞬ドキッとする接続にストレスを感じるのであるが、このストレスから開放されるスッキリ感の方がより大きな変化である。

 
☆劇的変化・dbx4800が生まれ変わった・PCM4222 AD Converter☆
ここでdbx4800の信号の流れをおさらいして見ると下記の通りである。
『バランス・アナログ入力>>ADコンバーター>>DSP>>DAコンバーター>>バランス・アナログ出力となる。
 
そして、DSPの入力と出力にはAES/EBU規格の「デジタルIN」と「デジタルOUT」が装備され、ここに外部のADコンバーターあるいはDAコンバーターを入れれば、dbx4800内蔵のAD,DAコンバーターをバイパスできる設計である。
 
つまり、「dbx4800内蔵のコンバーターがお気に召さなければ、どうぞお好きなものをお使いください」と言うわけである。上記のES9018 DACそしてAK4495 DACを使用することで、最新のディバイスを搭載したDAコンバーターに置き換えることができるのである。
 
同じようにプリアンプからのアナログ信号を、最新ディバイスが搭載されたADコンバーターに入力しAES/EBU規格のデジタル出力に変換すれば、dbx4800内蔵ADコンバーターを置き換えることが可能、デジタルチャンデバの仕様を決める要になる『DSPディバイス』以外は、必要であればユーザーの選択に委ねられているのである。さすがプロ機である!。
 
ADコンバーターをPCM4222に置き換える
左写真はTi/BBのADコンバーターチップPCM4222を搭載したADコンバータである。このADCに置き換えてみると、dbx4800の音が見事蘇ったのである。
 
少々不満であったTD4001は、アナログチャンデバ時代の音質を取り戻し、生き生きと鳴り出した。今、PCに取り込んだチックコリアの3枚組CD『Trilogy』を聴いているが、眼前に展開される臨場感には圧倒される。真に素晴らしい演奏(再生)が再現される。
 
dbx4800の発売は2006年である。デジタルICの進化が目覚ましいのはご承知の通り、本機はPCでコントロールできるが、対応PCは『Windows XP』しかも『RS232C』、時代を感じざるを得ない。
 
ここで、dbx4800で使用されているADC, DACチップを調べてみた。結果は下記の通りである。

DAコンバーター:CS4398・・Cirrus Logic 2002年頃
24bit 192kHz Multi-bit DAC DSD対応
 
ADコンバーター:ADS7844N・・Ti/BB
12bit 8ch Single Ended(アンバラ)or 4ch Diffrential(バランス)Input

今となってはいずれも年代物チップセットと言わざるを得ない。当時のADCチップは、DACチップに比べれば遥かに需要が少なかったため選択の幅も広くはない。
 
”あれから十数年”と言うわけで、今回新チップ搭載機、特にADコンバーターについては時代の進歩を感じた次第である。
 
今回は実験的要素もあり、ADCチップには「最新鋭」とは言えないPCM4222で試してみたが、結果は上々、いずれさらにスペックアップされた旭化成のADCチップ『AK5397』ADCに置き換えたい衝動にかられている。
↑ PCM4222搭載ADコンバーター
↑ PCM4222搭載ADコンバーター基板

 
☆旭化成『AK5397』AD Converter☆ 追試    2019.10.xx updated
 
上記でご紹介したPCM4222 ADコンバーターの好結果に触発されて、さらにハイスペックな旭化成エレクトロニクス・AK5397チップ搭載のADコンバーターに置き換えて追試を試みた。
 



静寂 音の鮮度
ハイハットのシャキシャキ感

オーディオ用電源ICの音を一聴し、あまりの違いに思わずニヤリとしてしまった。ジャンルを問わず、すべての曲が共通して明らかにS/Nが向上していた。音場の見通しがクリアーに、そして空気量が増したように感じられ、描き出す空間が立体的に拡大したのがよく分かる。「ヴェールを1枚取ったような」という表現があるが、軽々と2枚は取り去っていると言えるほどの違いが確認できた。

 また、低域がグッとタイトに引き締まったのにも驚く。「あぁ、この曲のバスドラムは本来こういう音だったんだ」と、音の細部まで聴き取れるようになったのだ。


 
  
 



 

   
   
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