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大西正隆・自己紹介のページです。皆様よろしくお願いいたします

「自己紹介」

1946年(昭和21年)生,川崎生まれの川崎育ち,団塊世代の1年上と言う年齢です。社会人になったのは確か1968年,地元のメーカーT社に入社,「オーレックス」と言っておわかりになる方は同世代ですね。そこの開発・設計部門が社会人のスタートです。当時はオーディオ機器が真空管から半導体に変わった直後の時代でして,もっぱら半導体部門で開発された,新しいトランジスタのオーディオアンプへの適合評価に明け暮れていた時期でもありました。

その3年後に品川に本社があるS社に転籍です。S社では当時オランダ・フィリップス社から開発・規格提案がされた「コンパクト・カセット」の商品開発部隊です。オーディオ機器が真空管から半導体へ,録音機器がオープンリールからコンパクト・カセットへと,ディバイス,メディアがドラスティックに変わって行く時代であったわけです。

社会人になっていきなり設計の現場へ投げ込まれて右往左往,しかも海のものとも山のものともつかない新ディバイスとの取り組み,当時は「社員教育」などと言う言葉なんてあって無きが如しでした。しかしそれらの体験が皆血肉になった時代でもありました。

特にコンパクト・カセット機器の商品開発は,私の技術の幅を広げてくれたディバイスの一つです。もともと私はエレクトロニクス・エンジニアであったわけですが,コンパクト・カセット商品は「電気屋」「メカ屋」と仕事の枠を決めてしまってはできない製品なのです。

例えばヘッドとテープが擦れるテープパス系,多くの慣性が期待できない小さなフライホイルが付いたキャプスタン軸,これらを正確に動かす駆動系(サーボ回路)の設計など,電気とメカとの接点である,いわゆるメカトロニクスでこの隙間を埋めないと完成しない製品なのです。そのためにはメカ屋はエレキを理解し,電気屋はメカを理解しなければならないのです。
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ねじり鉢巻に半田ごて,ペンチにヤスリ,パソコンなどまだない良き時代(?)に社会人になった一人でもあります。そんな良き時代もつかの間,いわゆる管理職と言われる立場になってからは米国勤務などを経て,自前の会社(株)KTエレクトロニクスを設立し,以来真空管アンプにドップリ状態であります。 

「私と真空管アンプ」

と言うわけで企業エンジニア時代の商品開発では,真空管機器はすでに過去のディバイスでありまた。しかし家に帰るとループゲインがどうしたこうした,位相が遅れるの進むの・・・・,近年ではビットレートだのサンプリングレートなどとややこしい話は頭から離れ,もっぱら真空管アンプ作りに精を出す日々でありました。

最初に作った真空管アンプは確か16才(1960年代)の頃だったと思いますが,6BQ5シングルアンプにクリスタル・カートリッジ,スピーカーはラワン材で作った箱らしきものに入ったメーカー不詳の16センチ,このあたりからが私のオーディオ歴の幕開けだったかも知れません。

以来自作オーディオを楽しんでいるわけですが,この間“真空管一辺倒”ではありません。トランジスター,FETなどの各種半導体アンプも何台も作りました。つまり真空管はオーディオアンプ(オーディオ・システム)を組み上げる上での「一つのディバイス」と考えています。いわゆる適材適所です。この考えは今でも変わりません。現在の私のシステムはマルチアンプ・システムですが,システム内にはFETを多用したチャンネル・ディバイダーを長い間使用しています。

FETディスクリート・オペアンプ構成のチャンネルディバイダー、定電圧回路部もディスクリート構成。2Way 3Wayに対応。加えてハイパスを2系統装備した多機能型設計。FETバッファーアンプを備え、金張り接点リレーを採用したラインセレクターを装備しラインアンプの機能も持つ。部品点数約1,000点を碁盤目基板にマウント。1990年作。現在現役のチャンデバ。     →(SONY TA-D88をテストしました)

「真空管アンプの再認識」

ところで,私にとりまして「家庭内のオーディオ再生では,真空管パワーアンプが最もふさわしい」と勝手に結論付けたきっかけは1982年の出来事です。1982年と言えば25年前,そうですソニーのCDプレーヤー「CDP-101」が始めて商品化された年,ディジタルオーディオ幕開けの年です。

当時私はいつでも試作機を聴ける環境にありましたので,CDP-101商品化前の試作機を何度も聞く機会がありました。いずれの試作機からも「これでアナログ(LP)は終わりか・・・」と思える,ある種感動的な音が試聴室では聞けたのです。何が感動的と言いますと,メカニズムの不安定要素,ワウとかフラッター,あるいはスピードの安定性,さらにはテープとかLPでは避けがたいヒスノイズ,スクラッチノイズ,これらが全く聞こえないSN比の良さと機械的安定性,当時のメインソースであったLP,テープと言った「メカ物」と比べその差は圧倒的なものでした。音はと言えば,天井知らずのダイナミックレンジ,特に伸びやかな低域はアナログでは得られない正に圧巻でありました。

その後量産直前の試作機が比較的長く借用でき,この際自宅に持ち帰り試聴してみることになったのです。高ぶる気持ちを抑えつつパワーオン。CDを入れてPLAYボタンをON。突然の大音量にあわててボリュームを絞る。この時のCDはノーチョイス,非売品のテスト用CDです。確かにLPとは違う,スゲッ!・・・・。というわけでしばらくは自宅で初めて聞くCDを感動的に聞いていたものです。

しかし,しばらくするとどうも何か物足らない。いや,音が良いとか悪いとかではなく,何か「雰囲気」とか「たたずまい」とかが感じられないのです。1枚しかない非売品CDのためかと思ったのですがどうも違う。自宅ではたいした出力ではないが,ボリュームを上げた時の大音量ではそのダイナミックレンジは中々のもの,でもしかし,通常音量に戻すと低域が締まりすぎた感じで引っ込みぎみ,今ひとつ物足らないのです。この当時はV-FETアンプと30センチ3ウェイでした。

古い機械だがまだまだ現役で活躍中の名機達
SONY製CDプレヤーとDAコンバーター
写真上1986年製「CDP-555ESD」
写真下1985年製「DAS-703ES」
CDP-555ESDはもっぱらトランスポートとして使用
DAS-703ESはシステムからはずせないリファレンス機
DAS-703ESの信号処理系とバッファーアンプ部
■DAコンバーターの音質はDACの分解能だけではない
■オーディオ信号に変換さた以降のアナログ回路で左右される
■この本質を具体化したのは、1984年リーリースされたDAS-702ES。
翌年さらなるアナログ部のブラシアップがなされ本機がリリースされた
■ちなみに定電圧部もディスクリート。もっと傑作なのはDIR部。機会があれば本機を入手してご覧いただきたい
DAS-703ESは後世に名を刻む逸品?だと思っている
DAS-703ES」関連ページ

そこで思いついたのは真空管パワーアンプです。その時手元にあったのは6L6GC PPアンプ,これをV-FETアンプと入れ替えてみました。これが効きました!。低域はふくよかになり,それに伴いすこしカリカリしていた中高域も適度に和らぎ,とたんに音楽性が増したのです。このとき以来我がシステムは真空管アンプが主役となり,様々な自作アンプが入れ替わって現在に至っています。
「エンジニアの“測定器症候群”」
エンジニアは常に「客観性」を求めます。これはいわばエンジニアの“測定器・症候群”とも言えるのです。私もそうです。いつの間にか実験室の棚には増え続けた測定器ではみ出んばかりです。しかし,オーディオ機器は「客観性だけ」では残念ながら完成しない製品なのです。最後のところは設計者の耳で決めなければなりません。このことを大事にしながらオーディオ機器の設計・製作に邁進してゆきたいと思います。

写真:正面に置いているのはアナログ式の計測器。年代物になってしまったが真空管アンプの測定には特に不足なく使用できる。アナログ式の計器にはデジタルにはない使い勝手の良さもある。

写真左手は高分解能デジタル処理の計測器群。写真左下段はナショナル(パナソニック)のオーディオ・アナライザー「VP-7722A」。このアナライザーはTHDポジションにて、実測-137dBを記録する“超・超”高分解能アナライザー。真空管アンプのひずみ波形の高調波分析にも使用するが、デジタルオーディオ機器の測定、あるいはOPアンプ等の高帰還型アンプの測定ではその真価を発揮する。

デジタル式の計測器は高分解能もさることながら、デジタル式ゆえの使い勝手のよさがあり、一度使い出すとアナログ式は「もういらない」と思う時もあるが・・・・。でもアナログ式もいまだ健在。計測器はこうして増え続ける。これを『測定器エントロピー』とでも言うのか!?。


ここで「科学的」と「非科学的」と言う言葉について考えてみます。

■科学的とは:理論と現象・実験結果が客観的に一致することである。
■非科学的とは:理論だけ,あるいは現象,実験結果だけで論じることである。

オーディオ製品は常に科学的でありたいと思いつつも,そうも行きません。しかしこの曖昧とも言えるファジーなところの考察と攻略に時間をかけることで,製品の個性が生まれます。このことも大事にして行きたいと思います。

今後とも皆様の暖かいご支援ご鞭撻のほど,よろしくいお願い申し上げます。


(記)大西 正隆



2010年5月 実験室にて


2014年 測定設備の様子

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