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■「HK-31」テクニカル・インフォメーション■
☆☆タムラトランス「リニューアル900シリーズ」搭載機・第二弾・KT150PP・モノーラルパワーアンプ☆☆
☆☆12AU7カソードフォロワー・ドライブ・AB2級・UL-3結切替・KT150PPモノーラル☆☆
☆☆KT150の他KT120/KT88/6550A他差し替え可能コンパチ・アンプ☆☆
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高解像度とマイルドさを併せ持つ大出力(65W/UL)・高音質パワーアンプ☆☆


■本機は2017年SUMMER「管球王国Vol. 85」発表機です
■このページの技術情報は試作機の実測データが記載されています。素子のバラツキ等で個々の製品の特性は若干異なります。
■サンプル機試作後の検討で,一部設計が変更されているモデルもございます。
■詳細はメールにてご案内いたします。お気軽にお問い合わせ下さい。
『HK-31』はモノーラルパワーアンプです

<写真のクリックで拡大します>
フロントビュー。ボリューム、電源SW等はシャーシ上面に装備。シャーシ上に装備されたメータによりプレート電流の調整は容易である。出力管はKT150を装着。 リアビュー。HK-31のスピーカ出力は、標準仕様で4Ω/8Ω/16Ωに対応する。
SP端子と並んで、写真右側に「UL-3結」SWを装備。
HK-31の内部コンストラクション。トランスにはリード線タイプが採用され、生まれたスペースに端子板が立てられ、配線が複雑なPPアンプでも整然と組み立てられる。
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■HK-31・回路図・実体配線図・特性pdf
モデル概要 ■タムラ「リニューアル900シリーズ」トランス搭載・第二弾・KT150PP・モノーラル・パワーアンプ
■12AU7カソードフォロワードライブ・AB2級プッシュプル
■固定バイアス・UL-3結接続・SW切替
■高出力PP・ステレオパワーアンプ・最大出力:65W/UL
■KT120/KT88/6550A他差し替え可能コンパチ・アンプ
■メータ搭載・容易なバイアス調整が可能
■音量調整ボリューム
■NFBアンプ
使用真空管 KT150x2本(ペアー) 
ECC81/12AT7x1 ECC99x1 ECC82/12AU7x1本・・・モノーラル1台分
定格出力 59.5W 8Ω負荷 周波数1kHz ひずみ率5%時の出力・・・UL接続試作機の実測値
最大出力 65.5W 8Ω負荷 周波数1kHz ひずみ率10%時の出力・・・UL接続試作機の実測値
周波数特性 10Hz〜50kHz ±0.5dB以内 出力1W 8Ω負荷時
10Hz〜100kHz ±3dB以内 出力1W 8Ω負荷時
ひずみ率特性 0.02%以下 1kHz/10kHz/100Hz 出力50W時・・・UL接続
ゲイン 27dB 周波数1kHz
NFB オーバーオールNFB≒17dB/UL 14dB/3結
入力端子 アンバランスRCA端子・入力インピーダンス100kΩ
出力端子 4Ω、8Ω,16Ω
残留雑音 0.3mVrms以下(VOL Mini時)
搭載トランス・型名
(いずれもタムラ製作所製)
出力トランス:F-925A(5kΩ)
電源トランス:PC-1036
チョーク:A-825A(8H 200mA)
AC電源・消費電力 AC100V 50/60Hz・100W(無信号時)
寸法・重量 (W)225x(H)55x(D)350mm・・・シャーシの寸法
トランス,ゴム足含む高さ:約195mm
重量:約13
kg
付属資料 回路図・実体配線図・部品表(A4版・印刷)
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『HK-31』の価格・・・価格はステレオ1セット(モノーラル2台)です。
■本体と真空管セットの価格は消費税・送料を含みます。
(沖縄県・離島の方への送料は別途お知らせします)
■真空管のブランドは代理店の在庫都合等により変更の可能性もあります。
本体パーツ・キット 真空管を除く全パーツセット ¥482,000
真空管セット タングソルKT150 2ペアー(4本) 12AT7x2本
ECC99x2 12AU7x2
¥84,000
完成品 手配線による組み立て・調整済 ¥646,000
シャーシ・穴加工済
(シャーシ単品販売です)
天板色:シャンペンゴールド・・標準
天板色:シルバーヘアラインも可
¥25,000/1台
(1台の価格です)
ご購入ご希望の方はメールまたはTEL/FAX:044-522-0926でお問い合わせください
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『HK-31解説・管球王国Vol.85抜粋』

■新型タムラトランス搭載・大型管KT150PPアンプ
タムラ製作所の管球式アンプ用オーディオトランス900シリーズのリニューアル版PC-1000シリーズがリリースされ、新型トランス搭載の300BシングルアンプHK-30を84号でご紹介しました。
 
新シリーズの電源トランスPC-1036は、電圧増幅部ヒーター用電流が2Aから2・5Aへ、出力管ヒーター用は2Aから3Aへ容量アップし、さらに2次側AC電圧が350Vから360Vへ、負荷電流は180mAから190mAへと、全体に一回り強化されました。
 
これらは些細なようですが、設計者にとって歓迎すべき仕様変更で、例えば、電圧増幅段の真空管本数を3本から4本へ、あるいはヒーター電流0・8Aを消費するECC99のような真空管を採用するなど、回路設計の自由度が広がります。
 
奥行き寸法は900シリーズと変わらずシャーシへの取り付けは互換性を保ちながら、高さ方向を20mm増加させて135mmに変更されました。同時に出力トランスには『末尾A』を付けて電源トランスと同一デザインになります。チョークコイルのケース寸法は従来品(A-825)とサイズは変わらず、ケースのデザインが統一され、同じく末尾Aが付けられています。
 
今回はこれらリニューアルトランス搭載機その第二弾として、新トランスの仕様に合わせて新たに回路設計を見直したKT150プッシュプル・モノラルアンプ『HK-31』をご紹介します。HK-31はKT150に最適設計としていますが、KT88、KT120に換装可能なコンパチアンプ仕様としています。
 ■■■→タムラトランス・900シリーズ・仕様.pdf

■出力管KT150は12AU7カードフォロワー・バッファーでドライブされる固定バイアスAB2級ドライブ
HK-31の全回路図は<■HK-31・回路図・実体配線図・特性pdf>をご覧ください。
 
初段電圧増幅段は12AT7によるSRPP回路、直結された位相反転/プリドライバー段は、ECC99/12BH7によるカソード結合型ムラード回路を採用しました。初段の12AT7は無帰還時のゲイン、NFB量等を熟慮した結果12AT7に決めました。
 
出力段KT150との間には12AU7によるバッファー回路を設け、出力段KT150をカソードフォロワーでドライブするAB2 PPアンプです。AB2級ドライバー回路は、限られた+B電圧の中からKT150にふさわしい高出力を得るためには不可欠な回路構成です。さらにはここにバッファー回路を入れることで電圧増幅段と出力段とを分離することができ、相互で生じる干渉を回避できることにあります。
 
さらには位相反転段の負荷が軽減され、低ひずみ率と高出力電圧が確保されると言う、正に優れたプリドライバー回路とすることができます。そしてその結果出力段との間で生じるひずみキャンセルが発生せず、各周波数でのひずみ率が良く揃った特性が得られます。
 
出力段KT150は固定バイアス方式、スクリーングリッドはUL接続と3結がSWで選択可能です。プレート電圧の実測は465V、プレート電流は50mAの設定で、UL接続時の定格出力は実測で約60W、最大出力は約66W(共に8Ω負荷時)と高出力アンプに仕上げました。
 
電源部はニュー電源トランス「PC-1036」を搭載し、整流ダイオードには前回300BシングルアンプHK-30でも採用しました高耐圧・高音質の、シリコンカーバイド・ショットキーバリアダイオード(SiC SBD)を採用し、KT150の持つ高音質を余すところなく引き出すことに寄与しています
 

整流ダイオードはSiC SBDを搭載 出力管のバイアス調整用メーター 出力端子右側に配置されたUL-3結SW
       

■フルスケールDC1Vの電圧計でプレート電流を調整する
組立完成後あるいは他の出力管に交換した際、本機はプレート電流の調整を行います。本機のプレート電流の設定は、V4,V5のカソードに入るR21,R22(10Ω)の両端電圧を、シャーシ上に備えられた1Vフルスケールの電圧計を監視しながら、電圧計左右の調整VRで0.5V(50mA)に設定します。
 
この場合のプレート電流はスクリーングリッドの電流も含みますが、無信号時のスクリーングリッドに流れる電流は極わずかですので、カソード電圧(電流)の値をプレート電流に置き換えています。調整要綱は、音量調整器最小、バイアス調整VRを反時計方向に絞り電源を投入、20〜25秒あたりから徐々に針が振れ、40〜50秒後位で一旦安定します。
 
この時点でバイアス調整VRを0.5V(50mA)に設定します。その後1〜2時間経過後に再度微調整して完了です。メーター上にあるV4,V5の選択SWは、ON-OFF-ON SWを採用しましたので、レバー中央位置でメーターはOFFになります。

V4とV5の電流アンバランスは、出力トランスの規格から最大で8mA以内ですが、通常は1〜2mAには入ると思います。そして、プレート電流の絶対値は45mA〜60mAの範囲に設定されていれば問題はありません。
  

■カードフォロワー回路で“相互接続の原則”を維持
本機の回路のポイントは、電圧増幅部初段にSRPP回路を採用したこと。そして、出力段KT150との接続は、『増幅部の相互接続の原則』に従うこと。この2点です。
 
相互接続の原則とは、限りなく小さな出力インピーダンスで送り出された信号を、限りなく大きな入力インピーダンスで受けるということです。この原則に従うためには入出力インピーダンス変換回路が必要で、本機では12AU7によるカソードフォロワーのバッファー回路がその役目を担っています。
 
12AT7 SRPPによる初段部と直結されたムラード型位相反転回路の出力電圧は、入力インピーダンス約200kΩのバッファーに入力され、カソードフォロワーで低い出力インピーダンスに変換され、音声信号をロスなく出力段KT150のグリッドに入力することができます。同時に電圧増幅段と出力管との間で発生するひずみのキャンセルが生じません。
 

■KT150は軽負荷動作で長寿命
AB2固定バイアスPPで動作するKT150はプレート電流50mAの設定で、プレート電圧は約465Vになり、この結果プレート損失は約24W、定格70Wに対して35%弱の動作点です。
 
実はプレート電流を50mAに設定したのは、電源トランスの発熱から決めれた値ですが、放熱に配慮をすれば65mA程でも問題はありません。ただ、65mAでの音質に優位性が見られなければ50mAの設定にしてください。
 

■本機の特性
本機の特性は<■HK-31・回路図・実体配線図・特性pdf>を掲載しています。
 
周波数特性:本機のオーバーオールNFBは17dBの設定ですが、フラット領域をあまり欲張らず、方形波の通り具合そして下記のボード線図などに目配りしながら適度な平坦特性が得られるような位相補正を施しています。100kHz以上の高域周波数では出力トランスの周波数特性に依存するところが大きいわけですが,出力トランスF-925Aの高域特性は特に破綻もなく、素直なインピーダンス特性を持った出力トランスで、NFBもかけやすいです。
 
ひずみ率特性:各周波数でのひずみ率特性はほぼ同じ、そしてリニア領域で直線的に増加して行く特性は、電圧増幅段と出力段との間に入るカソードフォロワーの恩恵で、段間で生じるひずみキャンセルが発生していない証です。
 
本機のULポジションでの出力は、ひずみ率5%時の定格出力で59.5W/8Ω/R、ひずみ率10%の最大出力で65.5W/8Ω/RとKT150にふさわしい高出力が得られます。
 
入出力特性:本機のNFBは17dBに設定しました。NFBを施した後の本機のゲインは27dB前後になります。

  
■NFBの安定度・ボード線図
   
 
左に示したグラフは、NFBアンプの高域安定度を示すボード線図(ボーデ線図)です。
 
普段見かけることが少ない特性図ですが、NFBループ内に位相が大きく変化する出力トランス持つ真空管アンプでは、例え少量のNFBであっても高域の安定度を客観的に把握する上では有効な測定です。
 
本機のボード線図からは、ゲイン余裕13dB以上、位相余裕は66.5度と測定され、17dBのNFBを施した本機の回路は、NFBに対して十分安定であることが示されています。
 
 
 
左に示したグラフは本機の周波数に対する出力インピーダンス(Ro)とダンピングファクター(DF)です。1kHzの周波数ではRo=0.7Ω、DF=11.4と測定されています。
 
下の図は出力に対するプレート電流の変化を示したグラフです。出力10W近辺まではAクラス動作、その後プレート電流が徐々に増加する特性は典型的なAB級動作です。
 
 

■KT120の潜在能力を示す高解像度でマイルドな音質
本機の前進KT120PPアンプ「HK-25」をリリースしたのは2013年でした。実はその時KT150も念頭にあったのですが、どうもKT150の容姿に違和感を覚え音も聞かずにボツにした経緯があります。
 
しかし、KT150の存在は頭から離れることなく、ほどなくKT120からKT150に換装して聴いてみると、頭で描いていたイメージ通り定位感、パワフルな低域はKT120よりは明らかに優位性を実感した次第です。
 
今回は電源トランスの強化に伴い、躊躇なくKT150を採用するとともに、KT150に最適設計とし、さらにその実力を引き出せたアンプです。近年の超低域が遠慮なく出てくるハイレゾ音源の再生でも、ウーハーをきちんと制動し部屋いっぱいに広がる痛快な低域は、まさにKT150PPアンプの実力発揮というところでしょうか。さらにはKT120アンプ同様、高解像度とマイルド感を合わせ持つ音質は、この球の持つ高いポテンシャルを感じさせます。
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