To Home マランツ7型・フォノイコライザー『HK-28NF』へ
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■CR型・フォノイコライザーアンプ「HK-28CR」テクニカル・インフォメーション■
☆☆マランツ7・NF型イコライザー回路とは一線を画するマイルドな音質を。
☆☆MCヘッドアンプ装備・容易な製作と再現性の高いオールインワン一枚基板を採用。

 
■このページの技術情報は試作機の実測データが記載されています。素子のバラツキ等で個々の製品の特性は若干異なります。
■サンプル機試作後の検討で,一部設計が変更されているモデルもございます。
■詳細はメールにてご案内いたします。お気軽にお問い合わせ下さい。
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<写真のクリックで拡大します>


HK-28NFと共通キャビ)

(CR型のレジストはブルー)
写真上・フロントビュー。写真下・リアビュー
フロントパネルはパワースイッチとネオンランプのみを配置したシンプルデザインで構成。
リアパネルにはMM入力端子及びMCカートリッジ入力端子の2系統を装備、MM/MCカートリッジはスイッチで切り替えられる。(シルバーも可です)
キャビ寸法は幅320mm x 奥行230を採用、全部品がマウントされたプリント基板と電源トランが整然と配置されている。
電源トランスはリーケージが少ないRコア・トランスを採用、本機の高S/N比に寄与している。
CR型プリント基板単品販売
HK-28CRのプリント基板
単品の販売です
価格:¥4,500(税・送料含む)
(組み立て資料一式付属)
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HK-28CR・回路図・実体配線図・PCBマウント図
モデル概要 ■12AX7 C結合2段増幅・カソードフォロワー出力
  CR型RIAAフォノイコライザー回路
■オペアンプ非反転増幅MCカートリッジ対応ヘッドアンプ内蔵
■MM-MC、2系統入力装備
■リレーによる入力切替
■CAD設計による精密両面プリント基板採用
■オールインワン・プリント基板の採用で高い再現性を実現
使用真空管 ECC83/12AX7 3本。 MC対応ヘッドアンプはオペアンプを採用。
入力端子 MM、MCの2系統 
入力インピーダンス MC端子:100Ω  MM端子:47kΩ  カートリッジの負荷抵抗
出力端子 RCAアンバランス1系統
推奨負荷インピーダンス50kΩ以上
周波数特性・RIAA偏差 20Hz〜20kHz ±1dB以内 出力0dBm 50kΩ負荷
ひずみ率特性(THD) 0.2%以下 入力MM端子 周波数1kHz 出力電圧1Vrms 50kΩ負荷
MM端子ゲイン 41dB 周波数1kHz
MCヘッドアンプ部ゲイン 23dB 周波数1kHz

■MCカートリッジは、ハイインピーダンス型(DENON DL-103等)を使用。
■ローインピーダンスカートリッジは、ステップアップトランスを使用してMM端子入力で使用。
最大出力電圧 20Vrms以上 周波数1kHz 50kΩ負荷
残留雑音 0.3mVrms以下 MMポシション 入力ショート
搭載トランス 電源トランス:Rコアートランス 低漏洩磁束型
AC電源・消費電力 AC100V 50/60Hz・25W
寸法・重量 (W)320x(H)88x(D)230・・突起物含まないキャビの寸法
ゴム足含む高さ:約98mm 重量:約3kg
付属資料 回路図・実体配線図・基板マウント図・部品表(A4版・印刷)
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『HK-28CR』の価格
■本体と真空管セットの価格は消費税・送料を含みます。
(沖縄県・離島の方への送料は別途お知らせします)
■真空管のブランドは代理店の在庫都合等により変更の可能性もあります。
本体パーツ一式・キット 真空管を含む全パーツセット
シルバーヘアライン・キャビネットも可です。ただし天板と底板は黒塗装です
¥78,000
プリント基板とマウント部品一式・キット 真空管は含みません ¥29,500
本体部パーツ一式 PCBマウント部品、真空管を含まないシャーシ部品一式 ¥42,500
真空管一式 12AX7 GD又は他ブランド 3本 ¥6,000
完成品 真空管を含む完成品 ¥123,000
プリント基板単品 基板のみの販売です ¥4,500
ご購入ご希望の方はメールまたはTEL/FAX:044-522-0926でお問い合わせください
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修正
マランツ7型フォノイコライザー『HK-28NF』はこちらです

■CR型フォノイコライザー『HK-28CR』の解説    

私がオーディオ誌にフォノイコライザーの設計・製作記事を発表したのは、古くは「ラジオ技術」時代の1995年、そして管球王国誌では2004年の『HK-8』、さらには2008年に発表した『HK-14』、いずれもNF型CR型フォノイコライザーでした。そして今年(2015年)にはこれら変遷の集大成版とも言える、マランツ7型・HK-28NFを発表いたしました。

この間、それぞれで音質の異なる回路方式を聞きながら、それでは「どちらが良いのか??・・・」と結論を出すべく試聴を繰り返してきましたが、簡単には結論が出せるものではありませんでした。カートリッジ個々の音質差も大きいですし、MCとMM、さらにはMCカートリッジ使用時のステップアップトランスとの相性などなど・・・、イコライザーアンプの音質を決める要素はたくさんあります。

「CR型イコライザーの音質」
そんな中、時間をかけて聴きこんでゆく中で、結局私のシステムではCR型で聴く機会が多いです。私はジャズをよく聴きますが、マランツ7型NF回路では、帯域も広く、幅広い音楽ジャンルの再生に対応し、清楚で分解能の高い鮮明な描写力は大変印象的に聴こえるのですが、反面「力強さ」にやや不満が残ります。

一方、CR型イコライザーは、NF型に比べ帯域の広さとか清楚な感じの再生音とは少し異なり、中低域の力強い押し出し感、濃密感といった力感が得られる音です。その一方で、空気感を伴ういかにもアナログ的な再生音も備えた音質は、ジャズを聴くことが多い私には魅力的に聞こえてきます。

こうした背景もあり、先に完成しましたマランツ7型フォノイコライザー『HK-28NF』に引き続き、CR型フォノ・イコライザー・アンプ『HK-28CR』をリリースすることになりました。本機はNF型と外観、キャビネット等は互換性があり、先にNF型『HK-28NF』を製作された方は、基板の入れ替えでCR型に対応します。本機にはNF型で搭載したオペアンプによるMCヘッドアンプも健在で、お手軽にMCカートリッジの再生もできるよう配慮しました。

「本機の回路」
CR型フォノイコライザーアンプ『HK-28CR』の全回路図はここに掲載しました。CR型回路のポイントは初段の設計が重要です。ローノイズ管での高利得増幅回路の設計が、S/N比確保の上からも、そして偏差の少ないRIAA特性を得るためにも必要な手段となります。このローノイズ・ハイゲインに最適な球がEF86と言うわけですが、現在では良質なEF86を数多く集めるのが難しい状況となりました。特にNFBの恩恵にあずかれないCR型では、真空管のばらつきが大きいと、直に電気特性のばらつきにつながります。

そこで本機の初段には、入手が容易で安定な特性が得られる12AX7を使用した回路構成を採用することにしました。一方、ハイゲインの三極管を使用した抵抗負荷増幅回路は、いわゆる「ミラー効果」と言う高域周波数でのF特低下現象が発生します。EF86のような多極管ですとか、ハイμ三極管でもSRPP回路ではミラー効果での高域F特低下はすくない回路方式ですが、抵抗負荷型増幅回路ではこのことを十分考慮した設計が必要です。

■ミラー効果による高域周波数特性■

ミラー効果による弊害がどの程度なのかを示したF特測定グラフをご紹介します。このデータは本機の増幅部回路中のイコライザー特性を作り出すCRを削除して、フラットアンプでの測定です。

20kHzでの高域減衰は、初段部のみで約3dB、MM入力からOUTPUT端子オーバーオールでは、約12.5dBの低下します。
増幅段に12AX7のようなハイμ管を採用した回路でしかも無帰還アンプは、上記の特性を念頭に置いて各部の定数を決める必要があります。

イコライザー素子を外したフラットアンプでの各増幅部のゲイン配分は次のとおりです。
<初段部・32.3dB>→<R5部での減衰量・-8.1dB>→<2nd Amp・35.3dB>=Total Gain・59.5dB(Flat Amp 1kHz)

12AX7抵抗負荷C結合2段増幅回路に、同じくC結合された12AX7のカーソードフォロワーで構成される本機の増幅部のゲイン配分は上記のとおりです。フラットアンプの段間にEQ素子(ローパス・フィルター)を入れ、RIAA特性を作り出した後の最終ゲインは、約41dB(MM端子 F=1kHz)に設定されています。NF型・HK-28NFのゲイン40dB(1kHz)にほぼ合わせた設定です。

本機の出力段は、12AX7によるカーソードフォロワー回路が採用されているのは上述のとおりです。一般的に低出力インピーダンスで知られるカソードフォロワー回路ですが、では実際に出力インピーダンスの値はどのくらいなのでしょうか?。出力インピーダンスの特性が示されている例は少なく、ここで本機の出力段のインピーダンス特性を示したグラフを下記にご紹介します。

■周波数 vs 出力インピーダンス■

周波数に対する出力インピーダンスの値を示したグラフ。測定はON/OFF法、負荷時の負荷抵抗は30kΩにて測定。
(出力部の回路定数は回路図を参照してください)

この測定より、本機の出力インピーダンスは100Hzまでが1.4kΩ、100Hzから徐々に上昇し、周波数20Hzで6.5kΩと測定されます。
機器間の接続(相互接続)は「小さなインピーダンスで送り出し、大きなインピーダンスで受ける」のが原則で、一般的には出力インピーダンスの5倍以上の入力インピーダンスで受けるのが望ましいと言われています。

この原則に従いますと、上記の出力インピーダンスの測定結果からは、低域まで十分なF特を得るための最適負荷インピーダンスは(プリアンプの入力インピーダンス)は少なくとも30kΩであることがわかります。プリアンプの入力インピーダンスは、一般的には50kΩ以上に設定されている機器が多いですので、本機の出力インピーダンスの値が特に問題になることはありません。

「MCカートリッジ用ヘッドアンプ」
本機のプリント基板にはオペアンプによるMCヘッドアンプを搭載しまた。結果的にはおまけのような標準的非反転増幅回路になりましたが、これに至るまでは様々な回路でテストをしてみた結果です。ゲインは23dBに設定、入力抵抗は100Ωです。DL-103に代表されるインピーダンス40Ω前後、出力電圧0.3mV前後のMCカートリッジを使用することを前提としています。ステップアップトランスを使用する場合はトランスの出力をMM端子に接続します。

近年オペアンプの性能向上はすさまじく、そして音質の良いオペアンプの入手も容易になりました。反面種類も多いためどれが最適なのかを選択するのもまた容易ではありません。購入価格も50円/個から3,000円/個という具合です。そんななか、本機で採用したのはOPA2604(Ti BB)です。最近何台かのDSD対応DACを検討している中で、このオペアンプの音質にほれ込んで本機でも採用しました。回路はDCが切れていますので、オフセット電圧の心配もなく、基板にはICソケットをマウントしますので他のオペアンプへの変更が容易です。

「製 作」
本機の製作は回路図と実体配線図 (HK-28CR・回路図・実体配線図・PCBマウント図) に沿って確実に行って下さい。同時にpdf ファイルにはプリント基板のマウント図を示しましたが、本機は1枚のプリント基板に全ての回路が集積されていますので、基板マウントが完成すれば後は入出力ジャックと電源部を配線すれば完成します。

各配線は、基板回りは0.5mmの単線、電源部は0.65mmの単線(緑)を使用し、各配線は実体図のとおりよじって配線します。電源部の配線とMM MCスイッチの配線は長くなりますので、コンベックスベースを使用しシャーシに固定します。キャビネットの天板以外の各パネルは歯付ワッシャー等を使用して組み立て、各パネル同士が導通していることを確認をしながら組み立てて下さい。

本機の突起物を含まないケースサイズは、320(W)x230(D)x98(H・ゴム足含む)、消費電力は15W(100V 50Hz)です。

「特 性」
下図に本機の一般特性を示しました。RIAA偏差カーブからは、ローエンドとハイエンド共にフラットネスが確保された特性を示していますが、低域周波数では負荷インピーダンス(プリアンプの入力インピーダンス)の値により変化します。本機では周波数20Hz〜20kHzの範囲で、負荷抵抗100kΩの時には±0.5dB以内、負荷抵抗47kΩの時には±0.8dB、負荷抵抗が30kΩに低下しますと20Hzで約1.5dBの低下が観測されています。このことより低域まで十分なF特を得るための本機の最適負荷インピーダンスは、50kΩ以上であることがわかります。

最大出力の実測値はTHD 5%時の出力が25.0Vrms、THD 10%時の出力は28.8Vrmsと真空管イコライザーならではのダイナミックレンジが得られます。本機のMM端子からのゲインは41.5dB/1kHz、MCヘッドアンプは23.5dBのゲインに設定されています。


本機ではプリント基板を採用することで、再現性の高い製作が可能です。無帰還アンプであるCR型回路はの残留ノイズの懸念もありますが、本機の聴感ノイズはNF型・HK-28NFに比べ若干劣るように聞こえますが、実用上十分に低ノイズイコライザーに仕上がっています。

内蔵のMCヘッドアンプも、回路は甚だプリミティブながら、お手軽にMCカートリッジを楽しむには十分な音質を有します。真空管は入手が容易な12AX7、ビンテージ管への置き換え、そしてオーディオ用途のオペアンプも多品種入手可能、HK-28NF同様これらに置き換え時間をかけて楽しめるイコライザーアンプです。

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