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■マランツ7型・フォノイコライザーアンプ「HK-28NF」テクニカル・インフォメーション■
☆☆今なお存在感を放つマランツ7・NF型イコライザー回路を採用。
☆☆MCヘッドアンプ装備・容易な製作と再現性の高いオールインワン一枚基板を採用。

 
■本機は2015年SPRING「管球王国Vol. 76」発表機です
■このページの技術情報は試作機の実測データが記載されています。素子のバラツキ等で個々の製品の特性は若干異なります。
■サンプル機試作後の検討で,一部設計が変更されているモデルもございます。
■詳細はメールにてご案内いたします。お気軽にお問い合わせ下さい。
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<写真のクリックで拡大します>

写真上・フロントビュー。写真下・リアビュー
フロントパネルはパワースイッチとネオンランプのみを配置したシンプルデザインで構成。
リアパネルにはMM入力端子及びMCカートリッジ入力端子の2系統を装備、MM/MCカートリッジはスイッチで切り替えられる。(シルバーも可です)
キャビ寸法は幅320mm x 奥行230を採用、全部品がマウントされたプリント基板と電源トランが整然と配置されている。
電源トランスはリーケージが少ないRコア・トランスを採用、本機の高S/N比に寄与している。
(NF型のレジストはグリーン)
プリント基板単品販売
HK-28のプリント基板単品の販売です。
価格:¥4,500(税・送料含む)
(組み立て資料一式付属)
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HK-28NF・回路図・実体配線図・PCBマウント図・pdf     (HK-28NF・プリント基板・REV 1.01・マウント図・pdf)
モデル概要 ■12AX7 C結合3段NF型・マランツ7型RIAAフォノイコライザー回路
■オペアンプ非反転増幅MCカートリッジ対応ヘッドアンプ内蔵
■MM-MC、2系統入力装備
■リレーによる入力切替
■CAD設計による精密両面プリント基板採用
■オールインワン・プリント基板の採用で高い再現性を実現
使用真空管 ECC83/12AX7 3本。 MC対応ヘッドアンプはオペアンプを採用。
入力端子 MM、MCの2系統 
入力インピーダンス MC端子:100Ω  MM端子:47kΩ  カートリッジの負荷抵抗
出力端子 RCAアンバランス1系統
推奨負荷インピーダンス50kΩ以上
周波数特性・RIAA偏差 20Hz〜20kHz ±1dB以内 出力0dBm 50kΩ負荷
ひずみ率特性(THD) 0.007%以下 入力MM端子 周波数1kHz 出力電圧1Vrms 50kΩ負荷
MM端子ゲイン 40dB 周波数1kHz
MCヘッドアンプ部ゲイン 23dB 周波数1kHz

■MCカートリッジは、ハイインピーダンス型(DENON DL-103等)を使用。
■ローインピーダンスカートリッジは、ステップアップトランスを使用してMM端子入力で使用。
最大出力電圧 20Vrms以上 周波数1kHz 50kΩ負荷
残留雑音 0.2mVrms以下 MMポシション 入力ショート
搭載トランス 電源トランス:Rコアートランス 低漏洩磁束型
AC電源・消費電力 AC100V 50/60Hz・25W
寸法・重量 (W)320x(H)88x(D)230・・突起物含まないキャビの寸法
ゴム足含む高さ:約98mm 重量:約3kg
付属資料 回路図・実体配線図・基板マウント図・部品表(A4版・印刷)
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『HK-28NF』の価格
■本体と真空管セットの価格は消費税・送料を含みます。
(沖縄県・離島の方への送料は別途お知らせします)
■真空管のブランドは代理店の在庫都合等により変更の可能性もあります。
本体パーツ一式・キット 真空管を含む全パーツセット
シルバーヘアライン・キャビネットも可です。ただし天板と底板は黒塗装です
¥78,000
プリント基板とマウント部品一式・キット 真空管は含みません ¥29,500
本体部パーツ一式 PCBマウント部品、真空管を含まないシャーシ部品一式 ¥42,500
真空管一式 12AX7 GD又は他ブランド 3本 ¥6,000
完成品 真空管を含む完成品 ¥123,000
プリント基板単品 基板のみの販売です ¥4,500
ご購入ご希望の方はメールまたはTEL/FAX:044-522-0926でお問い合わせください
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修正
CR型フォノイコライザー『HK-28CR』はこちらです

■マランツ7型フォノイコライザー『HK-28NF』の解説・管球王国Vol.76より抜粋
マランツ7が登場したのは1959年でした。当時はもちろん、半世紀を経過した現代でもマランツ7の特にフォノイコライザー回路は、確かな特性デーダーに裏付けられた優れた電気特性と、その性能に見合う高音質はまさにアナログファンにとっては唯一無二のイコライザーとして、その名声は今でも揺るぎの無い存在感を保っております。

自作派マニアであれば一度はトライしてみたい回路の一つであります。しかし、一方で「ハイゲイン多量帰還型」、「コンデンサー結合3段NFアンプ」方式が採用されたマランツ7のイコライザー部は、デリケートな回路でもあり再現に困難を極め、真空管アンプ自作派にとりましては少し敷居が高い存在でもあります。

私が管球王国誌でマランツ7型EQをご紹介したのは、2004年Vol.34 「HK-8」でした。HK-8は増幅部のみを片面プリント基板にマウントし、電源部はラグ端子方式を採用して製作しましたが、その安定動作、そして再現性の高さに今でもリクエストの多いモデルでもあります。そんな中、本機は両面スルーホール基板に、電源部も含めた全ての回路部品をマウントした、1枚基板方式を採用したマランツ7型フォノイコライザーアンプ「HK-28NF」をご紹介いたします。容易な製作と高い再現性に配慮したHK-28NFの入力には、MMカートリッジとMCカートリッジの2系統入力に対応し、基板にはオペアンプによるMCヘッドアンプを備え、お手軽にMCカートリッジの再生もできるよう配慮しました。

「本機の回路」
HK-28NFの全回路図はここに掲載しました。12AX7抵抗負荷C結合2段増幅回路に、同じくC結合された12AX7のカーソードフォロワー(CF)出力からのNFBによりRIAA特性を作り出す、C結合3段NF型EQ回路です。

CF段を除く各増幅段のプレート電流は300μA程度に設定されたハイゲイン・ハイインピーダンス増幅回路で構成されています。周波数1kHz、負荷抵抗50kΩの時の無帰還時の各段の利得は、初段が33dB、2段目が34dB、CF段は-0.6dBで、CF段出力終端抵抗50kΩでトータル約67dBの裸ゲインを持ちます。本機のNF後の1kHzの仕上がりゲインは、実測値で41.5dB(L,R共)です。

マランツ7のEQ回路は、今なお高音質回路として伝説的に語られているわけですが、NFBループ内に3つの時定数を持つこの回路、実は結構リスキーな面も含んでいます。少し長くなりますが、本誌Vol.34 でご紹介しましたHK-8の本文を引用しながらここで改めて3段NFBの安定度について考察してみたいと思います。

「マランツ7 EQ回路の低域安定性について」
C結合3段NFB回路ではNFBのループ内に3つの時定数を持つことは前述のとおりですが、この3つの時定数が適切でないとNFBにより位相回転が生じ、位相が180度進んだ周波数でピークが生じ、この時のゲイン余裕が0dBであれば発振してしまう条件が整い、実際に発振してしまうか、発振しないまでも不安定と言うことになります。

高域側の位相補正はC1とC4で行われますが、低域側は各段の『適切な時定数』の設定でNFBの安定性を確保します。この各段の時定数の差(比)をスタガー比(スタガリング)と言い、NFBによる位相の推移とゲインの変化を表したグラフをボード線図(あるいはボーデ線図)と呼びます。

ここで本機のスタガー比を見てみます。実際の時定数計算に使うRの値は、真空管の出力インピーダンスを含んだ値で少し複雑になりますが、ここではカップリングコンデンサーの値をCとし、Cに接続される負荷抵抗の値をRとして計算します。先ず1段目の時定数T1はC1(0.0μF)とR6(330kΩ)で時定数が作られ、その値は約3.3msです。同様に2段目の時定数T2は約100msとなります。問題は3段目の時定数T3の値です。T3は出力のカップリングコンデンサーC7とEQを接続するプリアンプの入力インピーダンス(R)が負荷抵抗となりT3が計算されますますので、回路図だけでは計算ができません。

マランツ7全体でこの部分を見てみますと、EQ部の負荷はバランス・コントロールの1MΩとボリューム・コントロールの500kΩが並列に入った約330kΩと高抵抗が定常負荷となります、これだけで計算しますとT3の時定数は155msになります。しかしここで忘れてはならないのは「REC OUT」がEQの負荷に並列に入り、「REC OUT」に録音機をつないだ場合は録音機の入力抵抗が負荷に加わり3段目の時定数T3が決まります。

一般的に各段の時定数の差は可能な限り大きくとり、とりわけT1とT3の比は少なくとも2倍以上、できれば5倍位の差を持たせておけば安定とされています。マランツ7のプリアンプ部の入力抵抗が330kΩと高抵抗に設定されているのは、外部につながる録音機の入力インピーダンスも考慮に入れて設定されているのがこれで理解できるわけです。

この観点から本機の負荷抵抗とT3の時定数を計算してみますと、T3をT1(3.3ms)の5倍とすると16.5msになり、C7が0.47μFですので負荷抵抗は35kΩ時16.45msと計算され、ここで少なくとも本機の負荷抵抗は30kΩ以上ということがわかります。最近ではプリアンプに録音機などつなぐことがなくなりましたが、プリアンプ部の入力インピーダンスと「REC OUT」端子につながる機器の入力インピーダンスが並列に入ってT3が決まることを念頭に置いておいてください。

ここで下記に低域周波数での負荷抵抗に対する無帰還時のゲインと、帰還時のゲインの変化の様子を示しました。EQアンプの場合には実際にはこんなに小さな負荷が接続されることはまれだと思いますが、この測定では負荷抵抗10kΩと、平均的なプリアンプの入力インピーダンス(入力抵抗)100kΩと大きく変えて測定しています。
このグラフからは100kΩ負荷時は少なくとも20Hzまでは負帰還が保たれ、超低域まで安定であることが示されています。一方、10kΩ負荷時では35Hz以下ではゲイン余裕がなくなり『無帰還時のゲインより、帰還時のゲインが高い』すなわち35Hz以下では正帰還(PFB)領域であることが示されています。ただ実際にはこの状態でも低域発振は観測されていませんので、35Hzでのゲイン余裕は0dBになるものの、位相余裕が僅かながら残されているものと推測できます。

これらの検討結果からHK-28NFの推奨負荷抵抗は50kΩ以上となり、本機の各特性測定は50kΩ負荷で行っています。マランツ7に限らず“伝説的な名機”のコピー機の製作をする場合は、抜き出した回路だけをみて製作するのではなく、前後の条件を含めて回路全体を理解した上で製作しなければなりません。

「MCカートリッジ用ヘッドアンプ」
本機のプリント基板にはオペアンプによるMCヘッドアンプを搭載しまた。結果的にはおまけのような標準的非反転増幅回路になりましたが、これに至るまでは様々な回路でテストをしてみた結果です。ゲインは23dBに設定、入力抵抗は100Ωです。DL-103に代表されるインピーダンス40Ω前後、出力電圧0.3mV前後のMCカートリッジを使用することを前提としています。ステップアップトランスを使用する場合はトランスの出力をMM端子に接続します。

近年オペアンプの性能向上はすさまじく、そして音質の良いオペアンプの入手も容易になりました。反面種類も多いためどれが最適なのかを選択するのもまた容易ではありません。購入価格も50円/個から3,000円/個という具合です。そんななか、本機で採用したのはOPA2604(Ti BB)です。最近何台かのDSD対応DACを検討している中で、このオペアンプの音質にほれ込んで本機でも採用しました。回路はDCが切れていますので、オフセット電圧の心配もなく、基板にはICソケットをマウントしますので他のオペアンプへの変更が容易です。

「製 作」
本機の製作は回路図と実体配線図 (HK-28NF・回路図・実体配線図・PCBマウント図・pdf) に沿って確実に行って下さい。同時にpdf ファイルにはプリント基板のマウント図を示しましたが、本機は1枚のプリント基板に全ての回路が集積されていますので、基板マウントが完成すれば後は入出力ジャックと電源部を配線すれば完成します。

各配線は、基板回りは0.5mmの単線、電源部は0.65mmの単線(緑)を使用し、各配線は実体図のとおりよじって配線します。電源部の配線とMM MCスイッチの配線は長くなりますので、コンベックスベースを使用しシャーシに固定します。キャビネットの天板以外の各パネルは歯付ワッシャー等を使用して組み立て、各パネル同士が導通していることを確認をしながら組み立てて下さい。

本機の突起物を含まないケースサイズは、320(W)x230(D)x98(H・ゴム足含む)、消費電力は15W(100V 50Hz)です。

「特 性」
下図に本機の一般特性を示しました。RIAA偏差カーブからは、ローエンドとハイエンド共に+0.8dB程度の上昇、可聴帯域で±0.8dBの偏差におさまっています。EQ素子C10の定数ですが、初期型のマランツ7では0.0056μF、後期型の7Cでは0.0068μFが採用されています。本機のC10は初期型0.0056μFです。

最大出力の実測値はTHD 5%時の出力が23.4Vrms、THD 10%時の出力は24.6Vrmsと真空管イコライザーならではのダイナミックレンジが得られます。本機のMM端子からのゲインは41.5dB/1kHz、MCヘッドアンプは23.5dBのゲインに設定されています。


「音 質」
マランツ7のNF型イコライザーは、幅広い音楽ジャンルの再生に対応し、清楚で分解能の高い鮮明な描写力は大変印象的です。試聴に使用したカートリッジは、少し高域に癖のある音がするのですが、オーディオテクニカの「AT-33ビンテージ」です。

この音を聴いていると発売以来半世紀が経過した今でもフォノイコライザー回路の雄として君臨している回路であることを再認識せざるを得ません。そして、あのマークレビンソンはLNP−2の開発に当たり、マランツ7のイコライザーを研究したとも言われ、マークレビンソンのみならず、我ら自作マニアに至るまでイコラーザー回路の範として現在に受け継がれているのもまたうなずける音質です。

本機ではプリント基板を採用することで、再現性の高い製作が可能です。特筆すべきはMMポシションでの低ノイズレベルは、プリント基板ならではの静けさです。内蔵のMCヘッドアンプも、回路は甚だプリミティブながら、お手軽にMCカートリッジを楽しむには十分な音質を有します。真空管は入手が容易な12AX7、ビンテージ管への置き換え、そしてオーディオ用途のオペアンプも多品種入手可能、これらに置き換え、時間をかけて楽しめるイコラーザーアンプです。

CR型フォノイコライザー『HK-28CR』はこちらです

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